キャプテン・ソル小説|異世界編|第1話:紅き海賊、やらかす

ソル小説|異世界編|1話 ソル小説・外伝物語

導入

この小説はキャプテン・ソルのメインストーリー後の話になります。

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キャプテン・ソル短編小説|自称ヒーローの日常記事

ある戦いの話

結論から言えば――。 今から語る戦いでは、死者は一人も出なかった。

だが、その代わりに、国の重要な防衛拠点が一つ、完全に消え去ってしまった。 それをやらかしたのは、たった一人の冒険者。青く燃える霊炎を操り、傍若無人に暴れまわるヤバい奴。

国の防衛の要を落とされ、被害は甚大。 だが、それでも。その冒険者が、人々の心を蝕む絶望を焼き払い、危機を救ったのは紛れもない事実だった。

厄災級モンスターと負の霧(ルトアルマ)

国境沿いの荒野に築かれ、他国から難攻不落と言われるほど強固に作られた『鉄壁の要塞』は、いま崩壊の危機を迎えていた。

「来やがった、この揺れの原因が!」

防衛兵の叫びと共に大地が爆ぜる。 土煙の向こうから現れたのは、城ほどの大きさを持つ一つ目の巨人――厄災級モンスター、サイクロプス。

だが、ただの巨人ではない。その身からはドロリとした黒い霧、負のエネルギーである『ルトアルマ』が溢れ出し、周囲の兵士たちの戦意を削り、絶望を振りまいていた。

「魔法で弾幕を張れ! 少しでも足止めをするんだ!」

拠点隊長の声に応え、魔法使いたちが各属性の魔法を放つ。しかし、巨人が纏うルトアルマの霧に触れた途端、魔法は威力を失い霧散していく。

「こんな化け物、勇者を連れてこないと勝てるわけねぇ……!」

人類の最高戦力「勇者」と、国が総力を挙げなければ対抗できない『絶望の具現』。それが厄災級の正体だった。

一般冒険者エス

そんな絶望的な戦場の後方で、一人の冒険者が走り回っていた。

「足、動きますか? さぁ、僕の肩につかまって!」

倒れた冒険者を担ぎ、瓦礫の陰に作られた避難所へ運ぶ青年――エス。 彼はギルドに招集されたCランク冒険者に過ぎない。この戦場では戦力外、後方支援がやっとだ。

だが、エスが負傷者の手当をし、「もう大丈夫ですよ」と微笑むたび。 救われた者たちの心に灯る「感謝」や「安堵」が、目に見えない光の粒子――『サノアルマ(正のエネルギー)』となって、エスの胸元にある銀のアクセサリーに吸い込まれていく。

(……よし。感謝のサノアルマ、変身一回分まであと少し……!)

「いえ、気にせずに。さて、もう一仕事ですね」

エスは再び戦場へ駆け出す。彼は知っている。このサノアルマこそが、あの絶望の霧を晴らす唯一の鍵であることを。

撤退命令と「赤い鳥」

要塞の司令室。総隊長はある知らせを受け、苦渋の決断を下した。

「撤退だ! 全員、ここを放棄して前線を下げろ!」 「ですが隊長! ここを捨てたら本国が!」 「……ギルドから連絡が来た。『ヤツ』を出す許可が下りたんだ」

「ヤツ」という言葉に、副官の顔が青ざめる。

「ヤ、ヤツって、あの『歩く戦災』ですか? アイツが来たら、拠点は……」 「ああ、拠点は持たないだろう。だが、今引かなければ命まで持たん。アイツに焼き払われる前に逃げるぞ!」

ふと、戦場の片隅でエスが空を見上げた。 空を横切る、炎でできた小さな鳥。ギルドからの『出撃許可』だ。 赤い鳥が弾け、その粒子がエスに吸収される。

『……エス、やっとお呼びがかかったか!』

エスの脳内に、待ちくたびれたような不敵な声が響く。

「ええ、ソル。でもギルドマスターから『やりすぎるなよ、絶対だぞ!』って念押しされてますよ」 『ケッ、信用ねぇな。大丈夫だって、俺はこれでも謙虚な海賊だからよぉ!』

「前に街一帯をゾンビパニックにした前科者がよく言いますね。……行きますよ、ソル!」

エスが銀のアクセサリーを強く握りしめる。

「最初から全開だ! 憑依変身!!」

S級冒険者キャプテン・ソル

爆音と共に、戦場に青い霊炎の柱が昇った。 炎の中から現れたのは、ボロボロの冒険者服ではなく、光り輝く海賊外套を纏った一人の男。

背中から噴き出す炎を推進力に変え、男は空を蹴る。 その勢いのまま、サイクロプスの腹部へ突撃した。

「ウボォォラァァァ!?」

あらゆる攻撃を無効化したルトアルマの霧が、その男が触れた瞬間に「浄化」され、光となって霧散する。

「ヨホイ! 恐れろモンスター! 称えろ野郎ども! 俺の名は紅き海賊、S級冒険者キャプテン・ソルだ!」

巨人が怒り狂って拳を振り下ろすが、ソルは空中を軽やかに舞い、それをかわす。

「デカいだけで隙だらけだぜ! エス、残りのエネルギーは!?」 (充填率80%! でも使いすぎるとすぐにガス欠になりますよ!)

「ハッ、一撃あれば十分だ! 全てのルトアルマを上書きしてやるよぉ!!」

ソルの右足に、超高密度のサノアルマが収束していく。

「――ソル・コスタール!!」

炎の弾丸と化したソルの飛び蹴りが、サイクロプスの脳天を直撃した。 瞬間、巨人の巨体が爆散――。 ……するだけではなく、そこから放たれたサノアルマの波動が、要塞の全域を真っ白な光で包み込んだ。

勝利!…でも

光が収まった後。 そこには、巨大なクレーターだけが残っていた。サイクロプスはおろか、かつての『鉄壁の要塞』までもが跡形もなく消え去っている。

「……あー、さすがS級。相変わらずだな」

総隊長がやってくる。命を救われた兵士たちが歓喜の声を上げる中、隊長の目だけは全く笑っていない。

「だろぉ? 文句なしの完全勝利ってやつだぜ!」

ドヤ顔で胸を張るソル。だがその直後、ソルの身体から青い炎が急激に薄れていく。

(ソル! エネルギーが空っぽです! ガス欠ですよ!) 『お、おっと……。ハシャぎすぎたか……』

シュウ……と音を立てて変身が解け、そこには青白い顔でフラフラになったエスの姿が。

「……で、ソルさん? 英雄さん?」 隊長が、何もなくなった広大な更地を指差して訊ねる。 「えっと……ここに……国の予算を注ぎ込んだ巨大要塞があったはずなんですが……?」

エス(ソル)は、空っぽになったアクセサリーを見つめ、少し考えてから、ぽつり。

「……ヨホイ。なんか、やっちゃいました?」

死者はゼロ。絶望もゼロ。 そして、国の予算もゼロ。 青い海賊と苦労人エスの異世界航海は、こうして盛大な「やらかし」と共に幕を開けた。

ヨホイ海賊、本日も説教決定。

呆然としてるソル。

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